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9 不条理

Penulis: あさじなぎ
last update Tanggal publikasi: 2026-08-07 20:35:27

 夕飯を作りながら、私はSNSで見たことを考えていた。

 本当に郁人は浮気、しているのかな?

 もう、考えただけで苦しくなってくる。

 今日の夕飯は、ハンバーグとポテトサラダとコンソメのスープ。それに煮物を何とか用意する。

 郁人が帰ってくるのは八時前くらいなので、先に俊太とお風呂に入って夕食を食べる。

 俊太と一緒に動画を見ながら私は落ち着かない気持ちで、何度も時計を見てしまう。

 今、七時半を過ぎたところだ。

 もう少しで帰ってくるはず。

 しばらくすると玄関ドアが開く音がわずかに聞こえて、俊太がばっと振り返る。

 近づく足音と、大きくなっていく私の心臓の音。

 俊太が立ち上がって、

「おかえりー!」

 と声を上げて扉へと近づいた。

 扉が開いて、郁人が入ってくる。

「ただいまー」

 そう言いながら、郁人は俊太の頭を撫でる。

 そして私の方をちらっと見て、

「飯は?」

 と、真顔で言う。

 私は自分の顔が引きつるのを感じながら頷いて、

「う、うん。今温めるね」

 と答えて、キッチンの方へと向かった。

「きょうねー、公園行った!」

 そう俊太が報告する声が聞こえてくる。

「へえそうなんだ。どこの公園?」

「えーと……なんかね、いっぱい遊ぶところあった!」

「じゃあ知らない公園かぁ」

 私はレンジにお皿をいれながら言った。

「お客さんに聞いて、離れた所にある大きな公園に行って来たの」

「お客さんねぇ」

 という、なんだか意味深なかんじの呟きが聞こえてきたけどなんだろう。

 胸がざわつくけれど、その違和感の理由がわからず私は郁人の夕食の準備を進めた。

 ハンバーグを温め、他の食事も用意して食卓に並べる。

 そうしたら今度は俊太を寝かせる時間だ。

 私はテレビに見入っている俊太に声をかける。

「ほら、歯磨きして寝よう」

「はーい」

 そう返事をした俊太は大きく欠伸をする。

 私は俊太を連れて洗面台に行ったあと寝室へと向かった。

 一緒に布団に入ると寝てしまいそう。

 特に今日は俊太とたくさん遊んだから余計に疲れを感じる。

 私は大きな欠伸をして、俊太を抱き締める。

 静かな室内。しばらくすると足音と、お風呂の扉を開く音が聞こえてきた。

 うとうとして私はいつの間にか眠りに落ちていた。

 扉を開く音で目が覚めて、私は辺りを見回す。

 でも辺りには誰もいなくて、私は首を傾げて扉を見つめた。

 スマホで時間を確認すると、時刻は九時過ぎだった。

 三十分ちょっとうたたねしてしまったらしい。

 食器、片付けないと。

 私は大きな欠伸をして、ベッドから這い出てリビングへと向かった。

 眠い。

 リビングから動画の音がする。

 室内に入ると、郁人がビールを飲みながら動画を見ていた。

 珍しい。

 いつもなら私が俊太を寝かしつけている間に、自分の部屋にこもるのに。

 会話も無く、私はキッチンに向かって水道の水を出す。

 食器を洗い、炊飯器の中のご飯を片付ける。

 これが終わったら、しろねこさんの動画見よう。

 片づけを終えてリビングの方に出たときだった。

 郁人が珍しく声かけてきた。

「なあ」

「え? 何?」

 驚いて私は郁人の方を見る。

 すると彼はソファーから立ち上がって、私にきつい目を向けてスマホを見せてくる。

「なあ、お前浮気してんの?」

 そこに写っていたのは、今日、行った公園で東雲さんと話をする私の姿だった。

「なに、この写真……」

 そう呟いて、ハッとする。

 もしかして、今日会った郁人の職場の人が撮ったって、こと?

 ちょっとどういうこと?

 訳が分からず、私は困惑して言った。

「これ、職場のお客さんよ?」

「はぁ? お前、事務だろ? なんで事務なのにお客さんとこんな親しそうにしてんだよ」

 明らかに疑う郁人の目。

 私はぎゅっと手を握りしめて言いかえした。

「そうだけど、人手がなくてこちらのお宅のお子さんの送り迎えしているの。お客さんのことだから詳しくは言えないけど……」

「こいつ、企業の社長なんだろ?」

 言いながら郁人はスマホを操作して、表示された画面を私に見せてくる。

 何かの雑誌の記事だろうか。

 東雲さんへのインタビュー記事のようだった。

 若手社長へのインタビューみたいな、そんなやつだ。

「あ……東雲さん」

 私は東雲さんの仕事についてはよく知らない。

 社長とは聞いていたけれど。

「若手の社長だって? ずいぶん親しそうじゃねえか」

 下卑た笑いを浮かべる郁人がなんだか気持ち悪く見えた。

「ちょ……ちょっと、私浮気なんてしてないってば。東雲さんはお客さんだし、これ、写ってないけど俊太もあちらのお子さんもいっしょにいるわよ?」

「子連れで浮気かよ」

 と、吐き捨てるように言われて、私もカチン、ときてしまう。

「何言ってるの? 自分が浮気してるからってなんで私を疑うのよ?」

「お前が子供の事ばっかだからだろ? 浮気の何が悪いんだよ?」

 言われた言葉に、私の頭の中が真っ白になる。

 同じ言葉をしゃべっているはずなのに、何言ってるのか全然わからない。

 浮気っていいんだっけ? えーと……訳分からなくなってきた。

 郁人は顔を歪めて、さっと振り返る。

「あーあ。昔は若くてかわいくて素直でいいなって思ったけど、やっぱ年取ると駄目だな。若い子の方がやっぱいいや。おい、一週間でここでて行けよ。ここは俺の家だからな」

 と言い、踵を返す。

「え? あ……え? ちょっとどういう……」

「ほら、離婚届。さっさと出て行けよ」

 なにこれどういうこと?

 呆然とする私を置いて、郁人はリビングを出ていった。

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