Masuk夕飯を作りながら、私はSNSで見たことを考えていた。
本当に郁人は浮気、しているのかな? もう、考えただけで苦しくなってくる。 今日の夕飯は、ハンバーグとポテトサラダとコンソメのスープ。それに煮物を何とか用意する。 郁人が帰ってくるのは八時前くらいなので、先に俊太とお風呂に入って夕食を食べる。 俊太と一緒に動画を見ながら私は落ち着かない気持ちで、何度も時計を見てしまう。 今、七時半を過ぎたところだ。 もう少しで帰ってくるはず。 しばらくすると玄関ドアが開く音がわずかに聞こえて、俊太がばっと振り返る。 近づく足音と、大きくなっていく私の心臓の音。 俊太が立ち上がって、 「おかえりー!」 と声を上げて扉へと近づいた。 扉が開いて、郁人が入ってくる。 「ただいまー」 そう言いながら、郁人は俊太の頭を撫でる。 そして私の方をちらっと見て、 「飯は?」 と、真顔で言う。 私は自分の顔が引きつるのを感じながら頷いて、 「う、うん。今温めるね」 と答えて、キッチンの方へと向かった。 「きょうねー、公園行った!」 そう俊太が報告する声が聞こえてくる。 「へえそうなんだ。どこの公園?」 「えーと……なんかね、いっぱい遊ぶところあった!」 「じゃあ知らない公園かぁ」 私はレンジにお皿をいれながら言った。 「お客さんに聞いて、離れた所にある大きな公園に行って来たの」 「お客さんねぇ」 という、なんだか意味深なかんじの呟きが聞こえてきたけどなんだろう。 胸がざわつくけれど、その違和感の理由がわからず私は郁人の夕食の準備を進めた。 ハンバーグを温め、他の食事も用意して食卓に並べる。 そうしたら今度は俊太を寝かせる時間だ。 私はテレビに見入っている俊太に声をかける。 「ほら、歯磨きして寝よう」 「はーい」 そう返事をした俊太は大きく欠伸をする。 私は俊太を連れて洗面台に行ったあと寝室へと向かった。 一緒に布団に入ると寝てしまいそう。 特に今日は俊太とたくさん遊んだから余計に疲れを感じる。 私は大きな欠伸をして、俊太を抱き締める。 静かな室内。しばらくすると足音と、お風呂の扉を開く音が聞こえてきた。 うとうとして私はいつの間にか眠りに落ちていた。 扉を開く音で目が覚めて、私は辺りを見回す。 でも辺りには誰もいなくて、私は首を傾げて扉を見つめた。 スマホで時間を確認すると、時刻は九時過ぎだった。 三十分ちょっとうたたねしてしまったらしい。 食器、片付けないと。 私は大きな欠伸をして、ベッドから這い出てリビングへと向かった。 眠い。 リビングから動画の音がする。 室内に入ると、郁人がビールを飲みながら動画を見ていた。 珍しい。 いつもなら私が俊太を寝かしつけている間に、自分の部屋にこもるのに。 会話も無く、私はキッチンに向かって水道の水を出す。 食器を洗い、炊飯器の中のご飯を片付ける。 これが終わったら、しろねこさんの動画見よう。 片づけを終えてリビングの方に出たときだった。 郁人が珍しく声かけてきた。 「なあ」 「え? 何?」 驚いて私は郁人の方を見る。 すると彼はソファーから立ち上がって、私にきつい目を向けてスマホを見せてくる。 「なあ、お前浮気してんの?」 そこに写っていたのは、今日、行った公園で東雲さんと話をする私の姿だった。 「なに、この写真……」 そう呟いて、ハッとする。 もしかして、今日会った郁人の職場の人が撮ったって、こと? ちょっとどういうこと? 訳が分からず、私は困惑して言った。 「これ、職場のお客さんよ?」 「はぁ? お前、事務だろ? なんで事務なのにお客さんとこんな親しそうにしてんだよ」 明らかに疑う郁人の目。 私はぎゅっと手を握りしめて言いかえした。 「そうだけど、人手がなくてこちらのお宅のお子さんの送り迎えしているの。お客さんのことだから詳しくは言えないけど……」 「こいつ、企業の社長なんだろ?」 言いながら郁人はスマホを操作して、表示された画面を私に見せてくる。 何かの雑誌の記事だろうか。 東雲さんへのインタビュー記事のようだった。 若手社長へのインタビューみたいな、そんなやつだ。 「あ……東雲さん」 私は東雲さんの仕事についてはよく知らない。 社長とは聞いていたけれど。 「若手の社長だって? ずいぶん親しそうじゃねえか」 下卑た笑いを浮かべる郁人がなんだか気持ち悪く見えた。 「ちょ……ちょっと、私浮気なんてしてないってば。東雲さんはお客さんだし、これ、写ってないけど俊太もあちらのお子さんもいっしょにいるわよ?」 「子連れで浮気かよ」 と、吐き捨てるように言われて、私もカチン、ときてしまう。 「何言ってるの? 自分が浮気してるからってなんで私を疑うのよ?」 「お前が子供の事ばっかだからだろ? 浮気の何が悪いんだよ?」 言われた言葉に、私の頭の中が真っ白になる。 同じ言葉をしゃべっているはずなのに、何言ってるのか全然わからない。 浮気っていいんだっけ? えーと……訳分からなくなってきた。 郁人は顔を歪めて、さっと振り返る。 「あーあ。昔は若くてかわいくて素直でいいなって思ったけど、やっぱ年取ると駄目だな。若い子の方がやっぱいいや。おい、一週間でここでて行けよ。ここは俺の家だからな」 と言い、踵を返す。 「え? あ……え? ちょっとどういう……」 「ほら、離婚届。さっさと出て行けよ」 なにこれどういうこと? 呆然とする私を置いて、郁人はリビングを出ていった。ソファーの前のテーブルに置かれるワイングラス。 白ワイン、かな。 それにクラッカーやキューブのチーズが、新幹線の柄の紙皿に並んでいる。 紙皿がちょっと微笑ましい。「洗い物、減らしたいので」 と言い、八尋さんは私の隣に座る。ほんのわずか、隙間を開けて。 八尋さん、今日もいい匂いがする。 いつもと違う匂いな気がするけど、何でだろう。 この匂い、あれ、もしかして。「あれ、入浴剤、ですか?」 自信なく言うと、八尋さんはうんうん、と頷く。「そうですそうです。ほら、おもちゃがでてくる入浴剤、あるじゃないですか」「あぁ、バスボムですね。なんかいつもと違う匂いがするなと思って」 すると八尋さんは驚いた顔を向けてくる。「よくわかりましたね。自分だと匂い、よくわかんないですけど」 そう言いながら、八尋さんは自分の手首を顔に近づける。 その姿を見ながら私は笑い、「あはは、自分の匂いってよくわかんないですよねー」 と告げる。 私はどんな匂いがするんだろう、って思ったけれど、俊太とお風呂、入ったあとだから石けんの匂いがするだけだよね。「子ども、バスボム好きですよねー」「そうですね。うち、出た人形が玄関に飾ってます。出たら満足なんですよねー」 そういえば、ここの玄関、可愛いキャラクターの小さい人形が飾られていたっけ。 あれ、バスボムのだったんだ。 八尋さんが、グラスを手に取り言った。「最近、ヘアゴムの飾りが出てくるバスボムもあるんですよねー」「え、そんなのあるんですか?」 どういうことだろうと思って、私はスマホで調べる。 ゴムは別でついていて、バスボムの中から出てきた飾りを乾かして、ヘアゴムにつけるらしい。 知らないうちに、すごいのでてた。よく考えるなぁ。「知らなかった」「あはは、そうですよね。俺もびっくりしましたけど」 そして彼はこちらを向いて目を細めて笑い、グラスを掲げた。「とりあえず、飲みましょう」「は、はい」 私はグラスを慌てて手に取って、八尋さんの方を向く。 うーん、八尋さんの顔見てると本当にドキドキするなぁ。 グラスを傾けて、「乾杯」 っと言いあって、私たちはグラスに口をつけた。 久しぶりにお酒飲むなぁ。 ぐい、と飲んで、クラッカーにチーズをのせて口にする。「んー、美味しい」「久しぶりですね、
ピザにスープ。それにサラダにローストビーフ。 たくさんのごちそうが並ぶなか、さくらちゃんが言った。「うわぁ! すごーい!」「皆で食べよう。食べおわったらケーキね」 そう私が言うと、俊太が両手を上げた。「わーい!」 ピザをカットして、紙皿にとって。 いつも飲み物は麦茶って決めているけれど、今日は特別にジュースだ。 「クリスマス、サンタさん何くれるかなー」「新幹線とー、車とー、あとねー」 なんて俊太が数えはじめると、それを笑って八尋さんが頷く。「いいなー、たくさんもらえるかなー」 すると俊太は大きく頷いて、手を大きく上にひろげた。「いっぱいがいい!」「そうねー、いっぱいだといいねー」 笑いながら言い、私は俊太に食べるように促す。 わきあいあいとご飯を食べて、片付けたあとはケーキの時間だ。 箱を開けて現れたのは、俊太が好きな新幹線のはやぶさが描かれたケーキだった。「はやぶさだー!」 プリントなのかな。すごくかっこよくはやぶさが描かれている。 正直、切るのがもったいない。 そのケーキに、八尋さんがろうそくを三本さして、火をつけた。「じゃあ電気消すね」 そう告げて、私はテーブルの上にある照明のリモコンを操作して、電気を落とした。 ろうそくの火が、暗闇の中でゆらゆら揺れる。「せーの」「ハッピバースデートゥーユー」 そう皆で歌う。 俊太は目をキラキラさせて、ケーキを見つめていた。 ケーキにささる三本のろうそく。それを見るとなんだか不思議な気持ちだった。 生まれて三年経ったんだ。 まだ三年? この数か月が怒涛過ぎてもっと時間が経っているみたいに思うけれど、そうでもないんだなー。 灯りをつけて、ろうそくをぬいて、ケーキを切り分ける。 楽しい時間はあっという間に過ぎていって、プレゼントを開けた俊太はぱあっと顔を明るくする。 新幹線の本に、パトロール隊のおもちゃ。 そのあと俊太はさっそく玩具で遊び、夜は絵本を読みながらベッドに入った。 本を読みながら俊太は私にいろんな話を教えてくれる。 しばらくすると満足したのか、大きな欠伸をして眠りについた。 その頭を撫でていると、眠気が襲ってくる。 八尋さんと約束があるから寝ちゃだめだ。 そう言い聞かせて私は、寝ないように薄闇の中、俊太の本を開いた。 しばらく
子供たちのお迎えは私がひとりで行った。 帰り道、「今日はー、誕生日だよねー」 と、さくらちゃんがわくわくした顔で言う。「ママ、新幹線は?」 顔を輝かせて言う俊太。「そうだねー、誕生日はちょっと違うやつかなー」 そう言って笑って誤魔化す。 だって、新幹線はクリスマスに買ったから、今回は犬のパトロール隊のおもちゃだ。 なにをあげてもよろこぶ、といいんだけどなあ。 正直このお年頃は何を欲しがるのか全然分からないんだよね。 子供たちを連れて帰り部屋に入ると、「たっだいまー」 と、声を弾ませてさくらちゃんがばたばたと廊下を走っていく。「さくらちゃん、あるこうねー」 そう声をかけると、さくらちゃんは急ブレーキをかけるように立ち止まって、こっちを振り返って下を出す。「へへへー」 なんて言って、さくらちゃんは、すり足で廊下を歩いて行った。 そんなの無視して、俊太は靴を脱ぐ。 そしてリビングに向かおうとするのを私は制した。「さきにあっちに荷物、おいてこよう」 言いながら、私は私たちが使っている部屋がある方を指差す。 すると俊太は目を大きく開いて声を上げた。「なんで?」「今日はそういう日なの」「なんで?」「先に手を洗って、うがいしようねー」「なんで?」 うん、今日はなんで攻勢がすごい。 私は内心苦笑して、それでもついてくる俊太を連れて流しに向かった。 八尋さんとこれは決めていたことだ。 俊太を今日、連れて帰ってきたらまず手を洗ってお片づけをする。 その間に、さくらちゃんたちが準備をするらしい。 荷物を片付けて準備をして、私はスマホを見た。 ちょうど八尋さんからメッセージが届いて、「準備出来た」と書いてあった。 私は俊太に手を伸ばして、「行こう」 と声をかけ、手を繋いだ。「なんで?」 と、俊太の疑問が始まる。「誕生日でしょー、今日は」「うん」 そう頷く俊太を連れて、私はリビングへと向かう。 そして、ノブに手をかけて俊太の方を見て言った。「一緒にあけようか」 すると俊太はばっと手を伸ばしてきたかと思うと、ガチャっと勢いよく扉を開いた。 するとパーン! という音と共に紙が舞う。 クラッカーだ。 音に続いてさくらちゃんたちの声がした。「お誕生日おめでとー!」 俊太はびっくりしたみたいで辺
鳴り響いたチャイムを聞いて私はさっと立ち上がってインターホンのモニターを見る。 それを見て私は思わず息をのむ。「あぁ、来た」 私がインターホンのボタンを押す前に、八尋さんがエントランスの扉を開くボタンを押した。「あ……」 私はハッとして後ろに立つ八尋さんの姿を見る。 今の人、この間見かけた女性、だよね? 八尋さんの会社の人。 胸の奥がざわざわしてしまう。 そんな私のことなんて知らない八尋さんは、ニコニコ笑って言った。「涼花さんは座って待っていてください」「え? いや、でも……」 私が家政婦だし、っていう思いと、例の女性を見たいっていう気持ちと、何ともいえないどろっとした感情が私の中にあってわけわからなくなりそうだ。 八尋さんは私を片手で制して、「大丈夫ですよ、それくらい俺が受け取るから」 と言い、バタバタとリビングを出ていく。 私は胸の前で手を握りしめ、じっと扉の方を見る。 どうしよう。気には、なるんだけどな。 ちょっと迷った後、私はゆっくりと扉に近づいてそして、その扉を開いた。 するとちょうど、扉が開く音が聞こえてくる。 玄関が見える所まで出て、ちょこっとそちらを見ると、八尋さんの背中が見えた。「ありがとう」「いいえー、それで準備はできたんですか?」 という、元気な女性の声が聞こえてくる。 ちらっとみえる頭とか見るとこの間見た人に間違いなさそうだ。 って、覗き見しているみたいでいやだな。何しているんだろう、私。 その時、ちらっとあの女性がこちらを見たような気がした。 その瞬間、にこやかに八尋さんと話をしていた女性の顔が一瞬、真顔になる。 でもすぐに笑顔になって、彼女は八尋さんの顔を見て、「それじゃあ私、帰りますね」「あぁ、うん。ありがとう、結城」 結城さん、ていうんだ。 彼女はこちらに背を向けて玄関ドアを開ける。 あ、まずい。八尋さん、戻ってきちゃう。 私は慌ててリビングの方へと戻って、さっきまで座っていた椅子へと向かう。 すっかり飲み物、冷めちゃった。 レンジで温めよう。 カップを持ってレンジに近づいたとき、扉が開く音がした。「お待たせしました。ケーキ、しまっておきますね」「あ、はい、ありがとうございます」 言いながら私はレンジにカップを入れて、スタートボタンを押す。「あとお菓
まだ二歳の俊太は、直接サンタさんからプレゼントを渡されてそのプレゼントとサンタさんを交互に見ている。 サンタさん、生で見るの初めてだもんね。 生、と言っていいのかよくわからないけれど。 サンタ役はたぶん誰かのお父さんだろう。 子供たち、ざわついているけどちゃんとお座りできてえらいなぁ。 その姿にまた、ほろり、としてしまう。 サンタさんタイムが終わってお遊戯会も終わる。荷物を抱えて私は俊太のお迎えに教室へと向かった。「ママ!」 そう声を上げて俊太が走ってくる。 「俊太」「あのね、サンタさんにもらったんだよ」 そして俊太は、手提げバッグを私に見せてくれる。 そこにはさっきもらったサンタさんからのプレゼントが入っていた。「よかったねー。うち帰ってあけようね」「うん」 ニコニコ顔になる俊太と手を繋いで、私は頭を下げて教室を後にした。 さくらちゃんは、今日はパパがお迎えだからこのまま帰ることになる。 園庭を出たとき、俊太がキョロキョロして言った。「さくらちゃんは?」「さくらちゃんは今日はパパがお迎えなんだよー」「なんで?」「さくらちゃんのパパがお迎えだからねー」 そう、答えになっている様でなっていないことを言ってしまう。 この年頃は、なんでもなんで? が多いような気がする。 さくらちゃんのパパがさくらちゃんをお迎えに行くのは当たり前なんだけど、その当たり前をどう説明したらいいのか、私にはわからない。「なんで?」 案の定、俊太は同じ質問を繰り返してくる。 こうなるとしばらく同じことの繰り返しになってしまうので、私はどう誤魔化そうかと考えた。 「お買い物して帰ろう? おやつ、何食べたい?」「おやつ食べる!」 誤魔化すにはやっぱりおやつが一番だな。 すっかりおやつに意識がいった俊太を連れて、私はスーパーへと足を向けた。 その数日後。 とうとう俊太の誕生日がやってきた。 わざわざ八尋さんは仕事を半休、とってくれて今、室内の飾りつけをしている。 その背中に、私は笑いながら声をかけた。 「こんな飾りつけしたの、初めてですよ」「そうなんですか? さくらのときはいつもこうしていて」 そう言って、彼は壁に飾りをつけていく。 ハッピーバースディの文字に、三、という数字。 星やら花やらのウォールステッカーも貼
先生の指示に従って、俊太がタンバリンを鳴らす。 その姿が可愛くって、スマホ越しにすっごい見てしまう。 合奏が終わって私はいっぱい拍手をした。 家じゃあまだイヤイヤ期で手がかかるけれど、保育園だとこうして先生の言うことを聞いて、こんな楽器の演奏までできて。 なんだかほろり、としてしまう。 ちゃんと成長しているんだなぁ、俊太。 その後の劇で、俊太はきこりの役をやっていた。 緑色のベストに緑色の帽子を被って。台詞は言えないから全部先生が言ってくれるんだけど、ちゃんとフリをしてて可愛かった。 第一部が終わって、席を入れ替わって私たちは後ろに下がる。 今度は年少さん以上のプログラムで、さくらちゃんの出番がある。 ざわざわと保護者たちが席を移動していると、八尋さんの姿を見つけた。 視線が合うと、彼は小さく頭を下げてくる。 私も会釈だけして、そそくさと視線をそらして席を移動した。 下手に見られてなんか言われても面倒だもの。 しばらくすると、第二部が始まる。 最初は年少さんの歌と合奏だ。 赤いベストを着た年少さんたちが出てきて、鍵盤ハーモニカを持っている子もいる。 その中にさくらちゃんの姿を見つけて、私は小さく手を振った。 後ろの方なのでちょっと見にくいけれど、スマホのカメラでアップにするとよく見える。 さくらちゃんは鍵盤ハーモニカをひくみたいで、ステージの前に置かれたテーブルにハーモニカを置いて、椅子に腰かけて演奏が始まるのを待っていた。 先生のピアノに合わせて挨拶をした後、子供たちが声を合わせて言った。「せーの、『さんぽ』をうたいます」 せーの、って言ってるのも可愛いくて、保護者たちから笑いが漏れる。 ジブリの歌は定番よね。 演奏が始まって、さくらちゃんも歌を歌う。サビに入る前にハーモニカの演奏が入って、さくらちゃんは一生懸命に指を動かしていた。 といっても一音を長くひいているだけだけど。すごいなぁ。 演奏は一番だけで終わって、皆が立ち上がって観客席へと頭を下げる。 そこにいっぱい拍手して、年少さんのお歌と合奏は終わった。 そのあと、年中さんと年長さんのお歌と合奏が続いて、そのあといよいよダンスの時間だ。 演目を見ると、さくらちゃんの出番はもうすぐだ。 なんか可愛い服を着て踊ると言っていたけれど、どんな服なんだろう







